抱き桜/山本音也


抱き桜 (小学館文庫)
小学館
山本 音也

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読後、人にやさしくな ...
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昭和三十年七月。夏休みのある朝、小学四年生の広之と
大阪から夜逃げしてきた家の子・勝治が出会った。
ふたりの無邪気な友情は、親たちの抱える複雑な情と
事情に流されて、ひりひりとした切なさを帯びていく。
幼ない恋、台風の夜の溺死事件、そして別れ・・・
ひと夏の体験と、かつて荒くれ者だった父が酔って語る
“魂の話”は、幼ない広之の心に何を刻むのか。 
戦争の傷跡残る和歌山を舞台に、少年たちの交流と
大人たちの人情の機微と愛情を、情感と哀切をこめて綴った
家族小説。
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初めての作家さんです。

舞台は戦後をまだ引きずっている昭和三十年の和歌山。
筏(いかだ)師として暴れ伊蔵と呼ばれた父と、優しい母。
貧しくてもたくさんの愛情を受けて育った広之。
けれど広之には、2歳で別れたもう1人の母がいる。
かつて父が筏で下ってきた川を遡れば、大阪の町にその母がいる。

夏休みに入って間もなく広之は勝治と出会う。
自分よりも貧乏で、大阪から流れてきたらしい。
勝治は時に大胆で強く、時に脆くて怖い。

いつも毎日一生、勝治と遊んでいたい。
勝治は両親が大好きで大嫌い。
ヤモリは家を守る。でも自分の家は普通とは違うから
ヤモリを瓶に入れて生殺しにする。
そのことで変わるかもしれないからと言う。

たったひと夏の限りなく濃くてかけがえのない時間。
桃の表面のザラザラや、駄菓子屋のお菓子。
ボットントイレに殴りあいのケンカ。
ミミズにオシッコをかけると○ンチンが腫れる話。
乾いた風と干からびた土。汚れた手足。

城の堀でライギョを釣り上げた時、管理人から聞かされた
タマシイの話。伊蔵が語る魂の話。
勝治の姉に出会う前まで憧れていた病院の二人姉妹が
突如、恐ろしいモノに変わってしまった瞬間。

超大型の台風が直撃した時のスリルと興奮。
その最中に起こった勝治の母の死。
聞きたいけれど聞いてはいけないこと。
初めて親に嘘を付いて勝治と二人で出かけた大阪。
そして突然の別れ。

様々な思いと心を引っ掻くような痛みと冒険と・・・
不思議だった男の子の謎の一部を覗き見した気分で
ちょっとだけスタンド・バイ・ミーを連想した。
楽しいけれど切なくて、そんなもやもやとした感情や
時にリアルに、時にモノクロに見える光景やニオイや温度が
ジワジワと浸透してくる感じで、懐かしささえ覚えた。

どこを向いても親の愛情が見え、子供との距離が近い。
だから本作を本当の意味で楽しめるのは50代後半から
60代の人だと思う。
吉野の桜。大和上市の桜は、きれいなんだろうなぁ~
読後感はジーンとします。

★★★★

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