秋の牢獄/恒川光太郎
ページ数:217p
発売日:2010年09月
11月7日水曜日。女子大生の藍は秋のその一日を何度も繰り返している。
朝になれば全てがリセットされる日々。
この繰り返しに終わりは来るのか──。
表題作他2編を収録、圧倒的な切なさと美しさに満ちた傑作中編集。
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秋というか、晩秋というか、この時期にはちょうどいい作品?
いやいや・・・心が乾燥してきたら、恒川作品を読む。
本当に裏切らない作家さんですよぉ~
「秋の牢獄」
タイムリープものです。
たまたま前回、いやぁ~なタイムリープものを読んだので
またか?と思ったけど、さすが恒川氏。
11/7を何度も繰り返している女子大生。記憶を残したまま
朝には全てがリセットされている。
そのうち、タイムリープ仲間が結構いることに気づくのだが
北風伯爵とあだ名される謎の存在が出現すると、仲間がいなくなる。
藍はタイムリープを抜け出せるのか?
「神家没落」
春の夜、ほんの気まぐれに公園を抜けようとしたら
古ぼけた民家に迷い込んでしまった。
翁の面を被った家主は、青年を跡取りに指名すると消えてしまう。
外に出ようにも出られない、家に囚われてしまった。
自分の身代わりを立てないと抜けられない。
決められた場所を定期的に巡っている古民家に
前の家主と知り合いの人たちが各地で訪ねてきたり
迷い込んだり・・・
青年が身代わりに選んだのは・・・
「幻は夜に成長する」
客から地獄を聞かされて、御簾を通して癒しの幻を見せる。
そんな逃げ場のない毎日の中でリオは心に怪物を育てる。
幼いころ、祖母と信じた人から幻を見せる力を使うことを教わる。
祖母だと思っていたのは、とある教団の教祖だった。
本当の家に戻り、普通の生活を取り戻したはずだったが
元教団関係者に拉致され、囚われの身となり・・・
それぞれの牢獄
牢獄というだけでイメージはよくないのだが、
3篇それぞれの牢獄に囚われた主人公が牢獄の中で何を考え
行動して、結果どうなったかというお話なのですが
主人公たちは何の罪を犯したわけでもなく囚われる
ある日突然訪れる怪異
あぁ~この世界観が恒川氏
ホラーというより幻想小説でしょう。
ホラー系もあるけれど(^◇^;)
その過程も結末すらも、想像を上回っていて、余韻を残します。
短編で読みやすく、あっという間に不思議な空間に
足を踏み入れた気になります。
やはり定期的に補充したくなります。
★★★★
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